今日も、昼間は暖かい一日でした。
夕方から、冷え込んできました。週末は寒くなるのかなあ・・。 今日の写真は、昨年12月に記載された、Navigobius dewaです。(HPトップの写真と同じですみません・・。) 和名は、もうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「モモイロカグヤハゼ」となる予定です。 通称「ピンクダート2」、矢野さんの「日本のハゼ」では、最後のページ、「クロユリハゼ科の1種-2」です。 2003年6月のある日、桜島南岸のとある場所に停めた船の上で、1ダイブを終えた僕達は、昼食をとっていました。 そこに、僕の20年来のダイビング仲間、矢幡裕之さんがエキジットしてきました。 矢幡さんと知り合ったのは1988年。お互いまだダイビングは100本に満たない初心者でした。以後22年、矢幡さんは、あちこち転勤があったものの、ともに錦江湾をはじめ、鹿児島の海を潜りたおしてきました。 今、僕がガイドをしている場所の中には、矢幡さんとともに競い合うように開発した場所もあります。 僕がダイビングガイドとなった今も、毎週のように鹿児島を訪れ、僕の船に乗ってともに錦江湾に出ます。 矢幡さんは、好きな言葉は?と聞かれると「深場」と答えるほどの深場好き。 一緒に船に乗っていても、僕とゲストを残して、錦江湾の深淵に消えて行きます。 その矢幡さんが、「なんか、下のほうで、赤い見たことない魚がいたよ」とエキジットするなり、僕に告げました。泳いで逃げ回るというその魚の話を聞いて、 「ハナハゼの幼魚じゃないですか?」(錦江湾のハナハゼの幼魚は赤っぽいのです。今でも深場にいると、ピンク2と見間違うことがあります)と、すっとぼけた返事をし、 「それで、水深はいったい何メートルなんですか?」 「・・・・・」 と、いつものような会話で、その場は終わりました。 そして一週間後、矢幡さんはL版にプリントした一枚の写真を持ってきました。 見た瞬間、僕は頭を思いっきり殴られたような衝撃を受けました。 「何ですか!この魚・・!」この錦江湾にこれほどまでに美しい、見知らぬ魚がいるなんて! その時の写真こそが、「日本のハゼ」の最後を飾る、「錦江湾(矢幡)」の写真なのです。 「この目で見てみたい!」 しかしその年は出現数が少なく、暇を見つけては探しに行ったのですが見つけられず、その後矢幡さんも見られなかったそうです。 翌’04年6月、ようやく僕は自分の目でこの魚を目にすることができました。 しかし水深は80m。見るのがやっとで、とても撮影できませんでした。 ’05年も、数個体を70m台で見るのみ。 そして、’06年6月、錦江湾の深淵より、湧き出るように彼らの群れが現れたのです! その数、数十匹!それも最浅は、40m台! この年、初めてゲストにもその姿を紹介することができました。 ’07年、3個体を採集、その標本で、この魚は、鹿児島大学総合博物館の本村浩之准教授とニュージーランドのHoese博士の手で記載されることになりました。 そして・・。 昨年も6月に彼らは突然に深みから姿を現しました。 夏、その数は数百という群れになり、秋には幼魚の群れを加えると数千という大群となりました。 そして、彼らの生息深度は徐々に深くなり、今では、水深70m前後に若魚の群れが見られます。 属名Navigobiusは、「泳ぐハゼ」という意味です。巣穴を持たず、遊泳して暮らす彼らの生態をよく表しています。 種小名には、本村准教授が採集者である僕の名前がつけて下さいました。 発見者の矢幡さんの手前、正直ちょっと申し訳ないような気がしています。 でも、矢幡さんは、「良かったじゃない!」と喜んでくれました。 今も、矢幡さんは、僕の船の右舷船尾から、愛用の使い込んだNexus LXを2台携えて、僕がゲストの皆さんにブリーフィングをしているときに、海に飛び込んでいきます。 そして、時々、びっくりするような写真を撮って、僕に見せてくれるのです。 追記:今年4月5日まで開催されている、かごしま水族館の第37回特別企画展 「集まれ!ごもんちゃん~小さなハゼの大きな世界~」で、モモちゃんが、生体展示されています。減圧を気にせず、また、ダイバーでない方も、じっくりゆっくり美しいモモちゃんが泳ぐ姿を観察できますよ。
by geikai_diver
| 2010-01-22 23:47
| 錦江湾
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