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潜ってきましたよ!錦江湾!

皆様、明けましておめでとうございます。・・遅くてすみません。
今年もどうぞよろしくお願いいいたします。

またしばらくブログ更新が遅れてしまい、たくさんの方々から、「無理して潜って、ぶっ倒れたんじゃないだろうな?」と心配のご連絡を頂戴してしまいました・・。
申し訳ございません・・。

いえいえ、出羽慎一、とても元気にしております!
復帰2回目、長島の海で覚醒しました。毎日、痛みに耐えて眠れず、目を腫らして寝たきり状態の僕は、もう過去のものとなりました!
海はサイコー!ご飯は美味しい!夜はよく眠れるの良い事ずくめで、以前大病を患った時に経験した、「海に潜り始めれば、全ては疾り始める!」は、今回も当てはまったのであります。
半年前にも会いに来てくださったS崎さんも、僕の変わりっぷりに驚かれておりました。

前回、明後日は錦江湾だ。と言っていた日は風が強くて笠沙方面に行き、30日についに錦江湾に行ってきました!

久しぶりに、手繰り寄せる愛艇「ゆうな」の係留ロープは重く、荷物の積み込みもろくにできず、心が折れそうになりましたが、港から出ると、油を流したような凪の向こうに、桜島がドーンと出迎えてくれるではないですか!これでテンションが上がらない訳にはいきません。

                   
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6年前まで毎日のように眺めていたアングルでの桜島です。
ボートは、凪を滑るように疾ります。
いつも僕を支えてくれる妻と娘が、舳先ではしゃぎます。

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牡蠣の養殖場になっているのではと思っていた船底も、長く回していなかったエンジンも、いつも並々ならぬ忍耐と優しさでバックアップして下さるマリーナ鴨池の廣津さんや皆さんのおかげで、絶好調です。桜島まで半分の距離はゆっくり様子を見ながら走り、あとは28ノットで、現場に急行です。
そう。何しろ、今日は桜島の南東部から西部まで、5箇所もサンゴの様子を見て回らなければならないのです。写真はお預け。妻撮影のコンパクトデジカメの写真を使わせてもらいました。海面を切り裂く飛沫に虹がかかります。いつも見ていた光景だなあ!

そして、桜島南東部へ。僕は船上待機です。悲しい事に、ここの素晴らしいシコロサンゴの大群落は、6年前にすでに増え始めていたオニヒトデに徹底的にやられてしまいました。6年前、有志でやっていたオニヒトデ駆除を続けていたら・・。悔しさがにじみます。
しかし、「小さなサンゴがたくさん出てきていたよ」との言葉に少し安堵します。

桜島南側も’90年代まではサンゴに覆われていた場所ですが、台風直撃にオニヒトデの食害で見る影もありません。しかし、ここにも小さなサンゴたちが育っています。
いつの日か、また素晴らしいサンゴ群集に戻ることを祈ります。
海の大先輩、廣津さんのお話しでは、’70年代にもオニヒトデが大発生して、桜島周辺のサンゴが壊滅したそうですから、20年後、30年後には昔の姿が見られるかもしれません。

そして沖小島・・。大好きなところです。
エンジンを止めると、聞こえるたくさんの種類の鳥たちの声、渚に佇むアオサギやクロサギ。よく弁当を食べられたカラスの野郎共もいます。
「また、あの船来たぜ、あいつらは少し待ってたら海に入るから、弁当は俺たちのモノだぜ」と言っているかどうかは知りませんが、岩の上に止まってこちらを見ています。・・いや、「あいつ、ひっさしぶりだなあ。生きてたのか・・」かもしれませんが・・。

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多種多様なサンゴ群集は健在です。
ポリプも開いて,元気いっぱい!
後ろの深場は気になりますが、今日はサンゴ調査ですからね。我慢です。

しっかし!やたらと目についたのはこの有様です。

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あちこちに崩れ落ちるサンゴたち。周りのサンゴは元気ですから、台風でも、オニヒトデでもありません。ボートのアンカーですね。
これには怒りがこみ上げてきました。

沖小島のこの辺りにボートを停めるのは、ダイビングボートでしょう。この辺りには浅瀬はほんの僅かです。その先はわずかな砂地があって、そして60m近く一気に落ち込む崖です。
アンカーを岩にかけたいのは分かります。船を流したくないですからね。でも、この辺りの岩場は全てサンゴやその他の付着生物に覆われています。
そして、錦江湾は透明度、水温ともに低く外海のサンゴに比べて成長が極端に遅いのです。数十年かけて成長したサンゴたちがアンカーの一撃で、粉砕され、消えてしまっているのです。自分たちが生まれる前から育ってきたサンゴたちを、不用意な行為で殺しているのです。
潜って、この有様を目で見て、気にならないのでしょうか?

アンカーは砂地にピンポイントで。流されるのが嫌なら、デカいアンカーを砂地に降ろして砂に固定すべきです。
砂地に生き物がいないとは言いませんが、ダメージははるかに軽く、回復も早いのです。
僕の船が、船のサイズに合わない程の大きなアンカーを積んでいるのはそのためです。

そして、アンカーとロープの間のチェーンも不要です。風で振られて船が動くと、チェーンは周囲の付着生物をめちゃくちゃに破壊します。
切れるのが嫌なら、太く強いロープを使えばいいし、擦れて傷めば換えればいいのです。
アンカーには2本のロープを使って、上げる時は真上まで船を移動して、アンカーの先のロープを引けば、最低限のダメージでそして簡単にアンカーは上げられます。

海の素晴らしさを伝える伝道師であるダイビングガイドたるもの、環境へのダメージをいかにして軽くして、スターの魚やウミウシだけでなく、全ての生き物の、海の素晴らしさを伝えなければなりません。
それはもちろん、そこまで言うなら海に潜らない事がベストだよという輩がいますが、それでは現場で伝えることができません。
お客さん無しで潜って、アンカーを降ろせる場所を徹底的に探して、そこにアンカーをピンポイントで降ろす。これができなければ、ここに潜る資格はありません。
何と言ってもここは、錦江湾国立公園の海中公園地区で、ここの海底は保護の対象でもあるのです。

愚痴をダラダラと書いてしまいました。申し訳ありません。あまりにも悲しかったからです。痛々しすぎて、目も当てられないくらいでした。ブログを更新できなかったのはこのためでした。怒りと悲しみと。

しっかりやろうぜ。背中の看板が泣くぜ?

沖小島を後にして、神瀬へ。ここの素晴らしいサンゴ群集は、一昨年久しぶりに直撃した台風で、きれいさっぱり一掃されてしまいました。基質が砂で、そこに積み重なる転石に育った大きなテーブル状のエンタクミドリイシは、うねりをまともに受け、もろくも崩れ去ってしまったのです。
もう、ここ15年近く、まともに台風が錦江湾を直撃することはありませんでした。その間に猛烈な勢いで成長した、外海由来のエンタクミドリイシたちの楽園は、跡形もなく消えてしまいました。
儚く消えた、夢のようなサンゴ群集でした。

そして、いよいよ桜島西端、袴腰へ。
1988年、鹿児島に来て以来、おそらく最も長い時間潜った海の一つです。ここだけで軽く5,000時間以上を過ごした場所です。
いつもの場所にピンポイントでアンカーを降ろし、娘と一緒に海底へ。
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久しぶり!2色シコロサンゴくん。なんだか下の黒い方がふた回りくらい大きくなっています。


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2006年の同じシコロサンゴの写真です。12年でずいぶん厳めしくなったもんです。
(透明度の違いも気になりますね・・)
まわりの泥の下には、カスリハゼたちが春を夢見て眠っている事でしょう。

そして、サンゴ調査からちょっと離れて、あの魚に会いに・・。
溶岩の暗がりを降りて行きます。揺れるムチカラマツ。妖艶なヤワラアカヤギ。花火を打ち上げたようなオドリカラマツ。
全てが同じ場所に、6年前と同じ姿で潮に揺られています。

僕は不思議な感覚に陥りました。
この苦しみ抜いた6年間は夢だったんじゃないか?だって、昨日と同じ景色が目の前に広がっているじゃない。
すべてが同じままです。

そして、溶岩の岩陰に、アカオビハナダイの小群が・・。
婚姻色が出ていなくて、くすんだ色をしているけれど、何て美しいんだろう?
この魚に魅了され、魅惑され、鹿児島の海を愛し、僕はこの鹿児島に暮らすことになったのです。

息を殺して眺める僕たちの目前で、エメラルドグリーンに輝く瞳がこちらを見つめます。
引き込まれるような美しさです。

魚類学の道へ進みたいという娘に、縦書きクエストで雌、雄、中間の区別を教えてやります。
しかし、それも野暮だったようです。娘はアカオビハナダイの姿に釘付けです。

長居は禁物、ゆっくりと浮上して娘を妻に託します。
僕はアンカーを外しに一人海底へ(袴腰の海底は岩場ですが、場所によっては付着生物が全くと言っていいくらいいない、静かな岩砂漠のような場所があるのです。ここがアンカーを降ろせる数少ない場所です)。

一人で海底に降りると、数々の思い出が甦ります。
K藤とO野とここでこんな事があったな・・。H島と2人でひたすらヒメギンポを追いかけたな。S末はマダラギンポの仔魚吐きを発見し、K木はテンジクスズメダイに振り回されていたな・・・。海底の全ての地形が愛おしい。何もかも、石ころひとつにも、全てが思い出に溢れている。
ここが僕のいる場所なんだ・・。

浮上すると娘が、アカオビハナダイの瞳が「怖いくらいに綺麗だった!」と興奮気味に話してくれました。
30年の年を経て、30年前の自分と同じように自分の娘が同じものを見て、同じように興奮し感動している!
また僕は、長い年月の流れと、変わらない海の生き物の美しさに、戸惑うくらいに感動し、めまいを覚えました・・。

さすがに5箇所も回ると、冬の日はもう沈みかけています。
僕は、光がついて夜景となりつつある鹿児島市内の母港に向かって、ボートを全速で走らせました。

冷たい空気が肌を刺します。そうだったなあー。冬の船上は辛かったなー。
今は高校教師として立派になった、僕を助けてくれていたO田君と小さなステアリングボックスのフェアリングの陰に身を隠しながら、みぞれ混じりの冷たい雨が降る中、時化た海をの上、波を避けるため、鹿児島市街地沿いの防波堤に沿って、しかしそれでも冷たい波を頭からかぶりながら走っている時、ちょうどラブホテルが海岸線ギリギリにある前を通りかかりました。ホテルは全室満室のようで、あったかそうなあかりが灯っています。そりゃ、今夜はクリスマスイブだもの・・。
「O田、あっちとこっちと、どっちが天国と思う?」と聞くと、
「え!?あ、それは、その、も、もちろんこっちに決まってすよ!」とずぶ濡れの顔に鼻水を垂らしたO田君が、無理やり微妙な笑顔を作りながら答えたのが昨日の事のように思い出されます・・。

そりゃ、天国はこっちに決まっているさ!
海はサイコーだもの!!















by geikai_diver | 2018-01-08 01:22 | 錦江湾
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